CLI(コマンドラインインタフェース)入門
コマンドラインインタフェース (CLI: Command Line Interface) は,ユーザがキーボードからコマンドを入力してコンピュータを操作する方式のインターフェースです.マウス(またはタッチパネル)やアイコンを使うグラフィカルユーザインタフェース (GUI) とは異なり,CLIでは文字だけで操作を行います.例えば,ファイルの作成,コピー,削除,プログラムの実行などを,コマンドを通じて正確かつ効率的に行うことができます.CLIは最初はとっつきにくく感じられるかもしれませんが,習熟度が上がればGUIよりも高速かつ柔軟に操作できる場面が多くあります.特にプログラミングやシステム管理,サーバ操作などの分野ではCLIが不可欠なツールとなっています.
CLIの代表的な例として,Windowsの「コマンドプロンプト」や「PowerShell」,LinuxやmacOSの「Bashシェル」などがあります.
コマンドプロンプト (cmd.exe) は,Windowsに標準搭載されている文字ベースの操作環境です.ファイル操作やシステム管理などを,キーボードからコマンドを入力して実行できます.コマンドプロンプトはWindowsではGUIではできない細かな操作や自動化に役立ちますが,機能は比較的シンプルで,複雑な処理やスクリプトには向いていません.歴史的にはMS-DOSの流れを汲んでおり,現在でも基本的な管理作業に使われています.
PowerShellは,Windowsの高度な自動化や管理を目的としたシェル環境で,コマンドプロンプトの後継的な存在です.PowerShellの特徴は,コマンドの出力が文字列ではなく,.NETオブジェクトであることです.これにより,複雑な処理や条件分岐,ファイル操作,ネットワーク管理などが柔軟に行えます.スクリプト言語としても強力で,Windows管理者や開発者に広く使われています.現在はWindowsだけでなく,macOSやLinuxでも利用可能です.
なお,.NETプラットフォームは,Microsoft社が開発したアプリケーション開発のための統合環境です.C#やVB.NETなどの複数の言語で書かれたコードを,共通の実行環境で動かすことができるのが特徴です.Webアプリケーション (ASP.NET),デスクトップアプリ (WinForms, WPF),モバイルアプリ (MAUI) など,幅広い分野で活用されています.
.NETでは,データや処理の単位を「オブジェクト」として扱います.これが「.NETオブジェクト」です.オブジェクトは,データ(プロパティ)と操作(メソッド)をひとまとまりにしたものです.PowerShellでは,コマンドの出力がこの.NETオブジェクトとして返されるため,単なる文字列でなく,構造化された情報として扱うことができます.
最後に,Bash (Bourne Again SHell) は,Linux や macOS などの UNIX 系 OS で広く使われているシェル環境です.コマンドの入力による操作に加え,シェルスクリプトによる自動化が可能で,開発環境やサーバ管理で重要な役割を果たします.ファイル名やコマンドは大文字・小文字を区別し,パイプやリダイレクトなどの機能も豊富です.Linux の基本操作を学ぶ上で,Bashの理解は欠かせません.
このセクションではコマンドプロンプト,PowerShell,Bashという3つの CLI についてその基本操作を学習します.